サントルの地方菓子
<トゥーレーヌ> <オルレアネ、ベリー>

<トゥーレーヌ>

土地の産物を使ったお菓子
○メンチコフMentchikoffs
シャルトルの名物。メンチコフとはロシア人の名前。プラリネとパート・ダマントを合わせたものを白いメレンゲで包んだもの。空豆の形のチョコレート菓子。倍くらいの大きさのパレ・メンチコフを作っているお菓子屋さんもある。

Migeon, Chartres
○ヌガー・ド・トゥールNougat de Tours
トゥール名物。タルト生地にアプリコットジャムやオレンジマーマレードを塗り、ヌガーを詰めて焼いたもの。店によって生地やヌガーの状態が異なるので、色々な食感のものがある。ヌガー・ド・トゥールのコンテストもあり、2001年の金メダルは「Poirault」。

Bigot, Amboise
Poirault, Tours
○Fond de tarte sucreeタルト・シュクレ生地
○Macaronade d'amandesアーモンドのマカロン生地
○Fruits confitsフルーツのコンフィ
○Nappee de confiture abricotsアプリコットジャムのナッペ
La Chocoratiere, Tours
○Pate sucreeパート・シュクレ
○Succes aux amandesアーモンドのシュクセ生地
○Fruits confitsフルーツのコンフィ
○Marmelade d'orangesオレンジマーマレード
○ポワール・タペPoire Tapée
ポワールは洋梨、タペはたたくという意味。直訳するとたたいた洋梨。洋梨をかまどで乾燥させて、専用の木の道具で1つ1つたたいてつぶしたもの。9kgの洋梨が1kgになる。トゥール近郊のリヴァランヌRivarennesには「ポワール・タペ博物館Musee de la Poire Tapée」がある。19世紀リヴァランヌはポワール・タペの町であった。ところが1985年には、昔ながらの作り方を知っているのはたった1人の老女となってしまった。しかし1987年にそのおいしさを知った人々が協会を作り、保護し、広めていった。アルコールに漬けてデザートとして食べたり、鴨と一緒に煮たり、フォアグラの付け合せにしたりして用いる。 


○コルデCorté
網状に編んだ牛乳入りのパン。
○カスミュッスCassemusse
チーズ入りパン。
○パテ・ド・プリュノーPâté de Pruneaux
プルーンの産地トゥールの、練りパイ生地の間にセモリナ粉やクッキーのクラムとプルーンを重ねてはさみ焼いたパイ菓子。
ペイ・ド・ラ・ロワール

キリスト教にまつわるお菓子
○コルムリーのマカロンMacaron de Cormery
マカロンはアーモンドパウダー、砂糖、卵白で作った生地を丸く絞って焼いた菓子。コルムリーのマカロンは、ロレーヌ地方ナンシーのマカロンと並び称され、その形が奇抜なことでも有名。もともとは791年、中世のコルムリーの修道院の生まれといわれる。形についてはおもしろい伝承がある。製菓担当のジャンという僧が作るマカロンは、とびきりおいしいことで知られていた。アーモンドパウダーと泡立てた卵白、砂糖を混ぜて焼いたものだが、ジャンのマカロンは神々の食べ物よりもうまいとの評判が高まるにつれ、僧院長はレッテルのようなものを決めて、他の菓子屋にまねられないようにしようと考えた。守護聖人の前で夜通しお告げを待つ僧院長に、夜明け前、神の声は告げた。「ジャンの調理場に行き、最初に目に入ったものにせよ」。そのころ、竈を熱しようとしていたジャンは、誤って僧服をこがしてしまった。駆けつけた僧院長が鍵穴から中をのぞく。すると目にとびこんできたのは、焼けた僧服の下のジャンのおへそだった。以来コルムリーのマカロンは真ん中に穴があいた奇妙な形をしているという。


現在、コルムリーの修道院の近くでマカロンを作っているのは、Oliver Couleon氏。お店は1892年にPochet氏が創業した「Maison Pochet」。このマカロンの正式名称はAux Véritables Macarons de l'Abbaye de Cormery(コルムリーの修道院の正真正銘マカロン)。材料は、Sucre砂糖, amandesアーモンド, blanc d'oeuf卵白, écorces d'orangesオレンジの皮, amandes amères苦いアーモンド(アーモンドエッセンス?)。アーモンドの粒が残っていてさくさくし、砂糖のじゃりっとした歯ごたえもあり、甘いけど軽い。オレンジの香りがほのかにする。日持ちは2週間程度。

★マカロンは、パリ、ロレーヌ地方ナンシー、ピカルディー地方アミアン、シャンパーニュ地方ランス、ポワトゥー地方モンモリオンやニオール、アキテーヌ地方のサン・テミリオンサン・ジャン・ド・リュズ、ベアルン地方ポーなど、フランス各地で作られるポピュラーな地方菓子である。



Maison Pochet, Cormery

お祭りのお菓子
○フワスFouace
15世紀末にシノン近郊で生まれたラブレーが書いた『ガルガンチュア物語』には、レルネ村のフワスを作る強情な職人が登場する。ラブレーが「朝食にブドウと一緒に焼き立てのフワスを食べるのは、神の恵みの肉を食べるようなすばらしさ」とほめそやしたこの菓子は、中世からルネサンスにかけて特に食べられていたといわれる。かつては小麦粉、バター、卵黄、サフラン、香料などで生地を作り、ふたをして、炉の中で灰をかぶせて焼いたと伝えられる。

Les caves de Marson,
Rou Marson
★フワスFouaceは、多くはブリオッシュ生地で作る、フランスで最も古いお菓子の1つ。「炉」を意味するラテン語focus(フォークス)から派生した俗ラテン語focacia「生地」が語源。かつては炉の熱い灰に無発酵の生地を埋めて作った。クリスマスや公現祭に食べるケーキで、昔は主に西フランスの習慣であったが、現代では南フランスに多い。南フランスではフガスFougasseといい、バターの代わりにオリーヴ油を使う。
○リュスロールRusserolle
揚げ菓子の一種。

<オルレアネ、ベリー>

土地の産物を使ったお菓子
○タルト・タタンTarte des Demoiselles Tatin
半割りにしたリンゴを鍋に詰め、折りパイ生地をのせてオーブンで焼き、裏返して供するデザート。オルレアンの南、ソローニュ地方ラモット・ブーヴロンのホテル経営者タタンの2人の娘が20世紀初めに考案したとされているが、この種の「裏返しパイ」はこの地方では古くから存在する。タタン姉妹がある日、リンゴのタルトを作った。そのときあわててリンゴと生地を逆に焼いてしまったものが好評を博してすっかり有名になった。

作り方は、タルト型にバターをたっぷり塗り、砂糖をふりかける。この上に4つ切りのリンゴをのせ、上からバター、砂糖をふりかけ、練りパイ生地でおおってから、リンゴに焼き色がつき、砂糖がカラメル状になるまで焼く。皿にひっくり返してのせる。


現在もラモット・ブーヴロンにはホテル・タタンがあり、タルト・タタンを作っている。こちらのシェフによると、タタンを作ったきっかけは、ここがまずしい土地なので、たまたま落ちていたリンゴを羊飼い達が拾って、それでお菓子を作り始めたとのこと。タタン姉妹の時代は、銅鍋を使い、暖炉に入れて焼いていたのだそうだ。その暖炉も残っている。今は特注の鍋(直径27cm)を使っている。生地は練りパイ生地(折パイ生地だと膨らむし、ピケしないとだめなので手がかかるから)。リンゴはしわしわになるくらいまで、木でよく熟したものがよい。9月末から10月に出回るレイネット種が最適。果汁が少なく、加熱に耐える品種がおすすめとのこと。
「ホテル・タタン」で教えてもらった作り方

Hôtel Tatin,
Lamotte-Beuvron
Jack Legarre, Lamotte-Beuvron
Ayrole, Lamotte-Beuvron
○パン・デピスPain d'epice
パン・デピスは、香辛料入りパン。英語ではジンジャーブレッド。発酵生地にハチミツ、スパイス、時にはフルーツの砂糖漬けを加えて焼いたお菓子。シャルトルのものは、ハチミツとサフランが入るのが特徴。→ディジョンのパンデピス

A la Renommée, Pithiviers
○ルヴルーのクラフティMillat de Levroux
サクランボのクラフティ。本家リムーザンとおいしさを競っている。
○マタファンMatafaim
中央フランスのパンケーキ。
○ポワラPoirat
西洋梨のパイ。梨は4つ割にして、砂糖と胡椒を加えたコニャックに漬けておく。これを練りパイ生地で包んで中央に穴をあけ、卵でてりをつけてオーヴンで焼く。
○ガロパンGalopin
リンゴを生地で包んで焼くブルドロの、オルレアネ地方の別名。
○ジャガイモのピュレ入りガレットGalette aux Pommes de Terre
フランス人はよくジャガイモを食べるが、ベリー地方ではガレットやタルトのように小麦粉を使った生地と組み合わせる。おやつやデザートに食べる。
○トリュフィアTruffiat
ベリー地方のジャガイモのタルト。ブール・クレティアンBourre-Chrétien「キリスト教徒の詰め物」ともいう。
○シトルイヤCitrouillat
ベリー地方のカボチャのパイ。カボチャを生クリームと砂糖で煮て、四角い練りパイ生地で包んでオーヴンで焼く。塩味にしてオードヴルとすることもある

キリスト教にまつわるお菓子
○ピティヴィエPithiviers
オルレアネ地方の小さな町ピティヴィエ発祥の、アーモンドクリームの入った花びらの形のパイ。この町では公現祭にガレット・デ・ロワの代わりにこのケーキを食べる。ピティヴィエのお菓子屋さんで違いを聞いたら「同じよ。ガレット・デ・ロワの方が、アーモンドクリームを多めに入れるわね。」とのこと。また、砂糖漬けフルーツを詰め、フォンダンでおおった同名のパイもある。
仔牛の胸腺肉と鶏のレバーと腎臓を詰めた調理パイにもこの名をつける。

『基礎フランス菓子教本(TRAITE DE PATISSERIE ARTISANALE)』によると、フランス王シャルル9世(1550生〜74没)がピティヴィエの近くでユグノー派の強盗団に捕えられたとき、捕虜が王だとわかると、彼らはあるパテを王に食べさせた。そのパテがおいしかったので、釈放された王は彼らに恩赦を与え、ピティヴィエの菓子職人の1人に王家御用達の特権を与えた。この職人は自分の作るパテにシャルル9世の馬車の車輪を真似た筋をつけた。これがピティヴィエの起源であるという。

現地では、いわゆるピティヴィエはピティヴィエ・フィユテと呼ばれていて、折りパイ生地にアーモンドクリームを挟んで焼いたもの。もう1つはピティヴィエ・フォンダンと呼ばれていて、アーモンドケーキに白いフォンダンがけしたもの。上にフルーツの砂糖漬けを飾っている。フォンダンの方が古く、フィユテの方は13世紀から作られているとのこと。

Au Péché Mignon, Pithiviers
A la Renommée, Pithiviers
Au Péché Mignon, Pithiviers

お祭りのお菓子
○ブニョンBeugnon
ベリー地方の揚げ菓子。

コンフィズリ
○オルレアンのコティニャックCotignac d'Orléans
大小の円形の平たい箱に入れて固めた丸いマルメロのゼリーで、オルレアンの古いスペシャリテの1つ。「マルメロ」を意味するラテン語からこのゼリー菓子を意味するプロヴァンス語codonatが派生し、coudoignacとなって現在の名になった。果汁が酸化して赤い色になったもので、フランスでは家庭でも作るポピュラーなお菓子である。15、16世紀頃から作られ、オルレアン公の宮廷、さらにパリの上流階級でも賞味されていた。ジャンヌ・ダルクがイギリスとの攻囲線に勝ったのは、戦いの前夜にコティニャックをなめたからと伝えられている。また、ハチミツを入れたマルメロのゼリーはニンフがジュピターの子に与えたという伝説もある。マルメロは西洋ナシとリンゴの合いの子のような形をしており、果肉は堅いのでゼリーやジャムにすることが多い。

左:B.Gouchault, Orléans
右:Chocolaterie Royale, Orléans
○モンタルジーのプラリーヌPraline de Montargis
アーモンドに飴色の砂糖を厚くからませたお菓子。モンタルジーの銘菓。
17世紀、ルイ13世に仕えるプラリーヌ公爵がボルドーに赴いていたとき、第1給仕長のクレマンが厨房で子供たちがアーモンドに砂糖をふりかけて焼いているのヒントに考えた。それを宴会でふるまったところ好評を得て、それ以降このお菓子は公爵の名をとってプラリーヌと呼ばれるようになった。その後クレマンはモンタルジに専門店を構えた。今ではプラリーヌは祭の屋台などでもみかけるポピュラーなものとなった。これを粉末やペースト状にしたものがプラリネ。 
○フォレスティーヌForestine
オルレアンの南、シエール県ブールジュのスペシャリテ。チョコレートクリームを、薄く繊細なサテンのような光沢のある砂糖生地でおおったもの。1878年に「メゾン・ド・フォレスティーヌMaison de Forestine」のオーナー、ジョルジュ・フォレストが試行錯誤の上、生み出した。