ノール・パ・ド・カレの地方菓子

土地の産物を使ったお菓子
○フラミックFlamique(またはフラミッシュFlamiche)
北部地方特産の質の良い野菜生かした田舎風のタルト。フらミックは「フランドルのケーキ」の意のフラマン語。もともとは円盤状にしたパンをオーヴンで焼き、溶かしバターをかけたものだった。現在では卵やチーズ、野菜をのせたタルトやトゥルトのことが多い。中に詰めるものによってポロネギのフラミックFlamique aux Poireaux、玉葱のフラミックFlamique aux Oignons、カボチャのフラミックFlamique à la Citrouille、マロワールのフラミックFlamique au Maroillesとなる。タルトの生地は練りパイ生地が普通だが、より軽い口当たりを好むなら折りパイ生地でもよく、多様なバリエーションが楽しめる。私がリールのカフェで食べたのはマロワールのフラミック。1つはタルト生地で、アパレイユはねっちり。もう1つはパンっぽい発酵生地で、上にチーズをのせて焼いたもの。ウォッシュチーズを使う割にはあっさりとした味。
ポロネギのフラミックは、ポロネギを薄切りにし、バターをたっぷり吸い込ませながらしんなりとするまで炒めて調味し、タルト用の生地に包んで焼く。ポロネギに生クリームや卵を合わせて焼くことも多い。
<Flamiche au Maroilles>

Brasserie Flore, Lille

La Voute, Lille
○ゴーフルGaufres
バターをたくさん使った発酵生地で作るワッフル。古フランク語wafel「ミツバチの巣」が中世フランス語walfreとなったのが語源。熱したゴーフル型に生地を流し、火にかけて焼く。13世紀頃、ある菓子職人が、ギリシャ時代からあった薄焼き菓子ウーブリにミツバチの巣のような形のくぼみをつけた型を考案して以来、この型で作り、ゴーフルと呼ぶようになった。
本場ベルギーにはリエージュ風とブリュッセル風とがある。リエージュ風はイースト入りのバターたっぷりの発酵生地にヴェルジョワーズをかけて焼く。弾力があって、もっちりしたタイプ。ブリュッセル風はリエージュ風よりもふんわりとやわらかい生地。四角く焼き、粉糖をかけたり、ホイップクリームを添えて食す。この他にベーキングパウダーで膨らませるアメリカンワッフルがある。

○ゴーフル・フーレGaufres Fourrées
薄い発酵生地の間にクリームを挟んだもの。北フランスでは特産のヴェルジョワーズとバターのクリームを挟むことが多い。この生地を挟んで鉄板をKゴーフリエと呼ぶ。庶民的なお菓子で、市や祭りには屋台で売られ、ジャムやハチミツ等を塗って食べた。
リールの「ヤンカ」で教えてもらった作り方

Méert, Lille

Yanka, Lille
★ベルギーのワッフル(ブリュッセルのダンドワDandoyのもの)
リエージュ風
イースト入りのバターたっぷりの発酵生地で作るので、弾力がある。生地にヴェルジョワーズを加えるが、その砂糖が表面に溶け出し焦げて、香ばしくさせる。
ブリュッセル風
リエージュよりもやわらかめの四角いワッフル。粉砂糖をふったり、ジャムや生クリームを添えることが多い。
○砂糖のタルトTarte au Sucre
ブリオッシュ生地を丸く平らに伸ばし、砂糖とバターをふりかけてオーヴンで焼く。特産のヴェルジョワーズを使うと、焼いたときにラム酒のような香りがし、コクがでる。
カソナード(砂糖キビから作られる未精製の粗い茶色の結晶)を使うレシピもある。

リールのものは、大きい物はタルト型を使って縁ちを作り、いわゆるタルトっぽく仕上げる。小さいものは縁がなく、パンに近い形をしている。味わいはとても素朴。濃厚なクリームが入るとミルキーに似たリッチな風味が出てくる。

リールの「ヤンカ」で教えてもらった作り方

Yanka, Lille

Yanka, Lille

Paul, Lille
○クラミックCramik(またはCramique)
ベルギーおよび北フランスの干しブドウ入りブリオッシュ菓子。オランダのパンケーキの一種クラミケン・ブロートKramikken broodから転じた語。別名を「クックKoek」という。クックとはフランドル語でお菓子の意味。17世紀頃作られ始めた。当時は小粒のコリント種の干しブドウを使い、バターが少ない代わりに卵黄を贅沢に使っていた。現地では、このクラミックが固くなると「パン・ペルデュ」というフレンチトーストを作る。
リールのMéertでは、干しブドウが入ったものと、あられ糖が入ったものがあった。ブリオッシュよりもふんわりとしていてほのかな甘さが上品。

Méert, Lille
○コクボトロムKokeboterom
フランドル地方ダンケルクのもの。小粒のコリント産干しブドウを入れたブリオッシュの一種。
○スモモのタルトTarte à la Pronée
やわらかく煮てつぶしたスモモのタルト。
○ト・フェTôt-fait
カトル・カールに似たケーキ。ト「すぐに」、フェ「作った」の意味。同量の小麦粉、砂糖、バター、卵におろしたレモンの皮、塩少々を加えてよく混ぜ、型に入れて焼く。
○ヴェルジョワーズVergeoise
砂糖きび、または砂糖大根(ビート)を原料とする製糖工場の最終段階でできる粗糖。砂糖の製法はまず、圧搾機で原料の糖汁を絞り出し、不純物を取り除いた後、加熱濃縮し、結晶化させる。これを遠心分離機で結晶と液体に分ける。結晶を冷却すると茶褐色の「原料糖」と呼ばれる粗糖の一種がができ、これを精製したものがグラニュー糖などの精製糖。残った糖液を結晶化させたものがヴェルジョワーズ。黄褐色で、風味にも特徴がある。主にベルギーやフランドル地方でお菓子に使う。褐色と茶色の2種がある。
★カソナードCassonadeは、砂糖きびを原料とする褐色の粗糖。

お祭りのお菓子
○クロキニュールCroquignole
軽くてぱりっとしたベニエ。枝の主日(復活祭前の日曜日)に色々な色をつけて作り、子供に与える習慣があった。
○ラトンRaton
フレッシュチーズや生クリームなどを詰めた、フランドル地方ヴァランシエーヌのタルトレット。中世にはreston「残り物」と呼んでいた。マカロンを加えることもあり、肉断ち期間中に食べた。
○ニュールNieule(またはニウルNieulles
フランドル地方の伝統菓子。直径4、5cmの丸いビスケット。スペイン語nolas「パンや菓子のかけら」が語源。5月1日、アルマンティエール市の市役所の窓からこれを投げる祭がある。(9月の第2日曜のニウル祭という説もある。)中世にもニュールールNieuleurと呼ばれたプロテスタントの職人が作った同名の菓子がある。小麦粉を固く練った生地をゆでてから香りづけのためにブドウの枝の灰でおおい、かまどで焼いたものである。この職人たちがナントの勅令の後ドイツに亡命して以降、フランスでは作らなくなったが、後世、ドイツからアルザス地方に同様の菓子がプレツェルの名で逆移入された。
○クラクランCraquelin
ビスケットの一種。オランダ語krakeling「(8の字の形をした)ビスケット」が語源。ブルターニュ、ヴァンデ、フランシュ・コンテの各地方にもある。主に肉断ち期間中やクリスマス、新年の祭に食べた。この地方のものは発酵生地に氷砂糖を混ぜ込んで焼く。

コンフィズリ
○ベティーズ・ド・カンブレ(ハッカ入りボンボン)Bêtises de Cambrai
ミント風味のテンサイを原料にしたボンボン。1850年頃、フランドル地方のカンブレのアフシャン社が製造を始めたと主張している。このボンボンは菓子屋の息子の失敗作(ベティーズ)だったものが子供たちに大変気に入られ、今日でも作り続けられているという話しもある。中に小さな気泡が入っているため、白くて軽い。同地方ヴァランシエーヌではこれをまねて同義の語ソティーズSottiseを転用した語で同じボンボンを作っている。
○プチ・カンカンPetit Quinquin
色々なフルーツを調合した芳香が甘酸っぱい飴。リールのスペシャリテ。1921年、当時ヒットしていた歌(リール生まれの歌謡作家でルソーのノール語なまりの子守歌)をヒントに作られた。
○クロシェット・デュ・カリヨンClochette du Carillon
鐘の形に似せた三角形のキャラメル。サン・タマン・レ・ゾーというリールとベルギーの間にある町の店「チュロットThurotte」のスペシャリテ。カリヨネール(カリヨンを鳴らす職業)に敬意を表して考案したもの。