プロヴァンス・アルプ・コート・ダジュールの地方菓子
<プロヴァンス> <コート・ダジュール>

<プロヴァンス>

土地の産物を使ったお菓子
○フガス・オ・グラトン Fougasse aux Grattons
南仏独特の穴あきパン。グラトンという脂を出してかりかりにした豚やガチョウの脂肪繊維を入れて焼く。フランスパン生地、クロワッサン生地、田舎パン生地などで作られる。昔、パンの発酵状態を見るために、試しに生地の一部を平たく伸ばして焼いていた。これが独立したものという。

(Fougasse glatillon), Arles

(Fougaces aux fritons), Carcassonne
○松の実のタルトTarte aux Pignons
タルト生地にアーモンドクリームを流し、松の実をまぶしたもの。あるいは、ハチミツ、バター、生クリームでキャラメルを作り、松の実をまぜたものを詰めたものもある。松の実はプロヴァンス地方から南西部のラングドック、ミディ・ピレネー地方にかけて、かなり古くからお菓子に使われてきた。
○松の実のクロワッサンCroissants aux Pignons
エクサン・プロヴァンスが本場の、松の実を混ぜ込んだ小さなクロワッサン形のアーモンド菓子。プロヴァンス出身のノストラダムスの1552年の著書に登場している。卵白、粉糖、アーモンドパウダー、松の実を混ぜ、低温のオーヴンで乾燥焼きする。
○ギャラピアン
フルーツの砂糖漬けをラベンダーのハチミツ入りアーモンド生地と一緒に甘いタルト生地に流し入れて焼いたもの。
○ガレット・プロヴァンサル
サブレ生地を丸く伸ばして、メレンゲ生地を流し、フルーツの砂糖漬けを飾ったもの。
○タルト・リュベロン
2枚の丸い生地にフルーツのジャムをはさんで焼いたもの。
○クルスタッドCroustade
ぱりっと焼いたパイ殻に詰め物をした料理。プロヴァンス語crousto「殻、皮」から派生した語croustadoが語源。もともとプロヴァンス地方の料理だったが、今では地方の別なく作る。折りパイ生地、練りパイ生地、ジャガイモのピュレや米、スムール(硬質小麦を粗くひいたもの)を固めてくりぬいた殻、パンの白身を揚げてくりぬいた殻にファルスを詰めて作るオードヴルやつけ合わせ。

ミディ・ピレネー
○パニスPanisse
エジプト豆の粉で作るプロヴァンス特にマルセイユの塩味、甘味の揚げ菓子。

お祭りのお菓子
○ガンス・ド・カーニヴァルGanse de Carnaval
カーニヴァルが近づくとパン屋に並び始めるお菓子。パン生地を揚げて粉砂糖をまぶしたもの。オレンジの花の水がほんのりと香る。Bugne(ブーニュ)、Merveille(メルヴェイユ)と呼ばれることもある。

キリスト教にまつわるお菓子
<プロヴァンスの13種のデザート(トレーズ・デセール・ド・プロヴァンス)
13 Desserts de Provence>

プロヴァンス地方ではクリスマスイヴの深夜ミサの後、キリストの最後の晩餐にちなんで13種のデザートを食べる。ブッシュ・ド・ノエルなどに比べ宗教性が強い。クリスマス用ポンプ、干しブドウ、カリンのゼリー(パート・ド・コワン)、カリソン、ヌガー、フガス、レモンの砂糖漬け、クルミとヘーゼルナッツ、洋梨、プルーン、干しいちじく、アーモンド、なつめやしの実。(地域によって多少異なる)中央においたポンプはキリストを示し、まわりのお菓子はその使徒を表すという。
○ポンプ・ア・ルイユ Pompe à l'Huile
オリーヴ油入りの発酵生地で作る平たい菓子パン。オレンジの花の水で香りをつけたり、すりおろしたフルーツの皮を混ぜる。プロヴァンス地方、特にエクサン・プロヴァンスの13種のデザートの1つ。ラテン語pompa「荘厳さ、偉大さ」から転じた語。ルイユは油。「ポンプ」は地中海沿岸での呼び名で、アプトより北では「ジバシエgibassier」、南では「フガスfougasse」と呼ばれることが多い。

ニース、サレヤ広場の朝市
下はMounaというポンプの変形
★フガスFougasse
フワスFouaceは、多くはブリオッシュ生地で作る、フランスで最も古いお菓子の1つ。クリスマスや公現祭に食べるケーキで、昔は主に西フランスの習慣であったが、現代では南フランスに多い。南フランスではフガスFougasseといい、バターの代わりにオリーヴ油を使う。 

(Fougasse roquefor), Arles
○ガレット・デ・ロワGalette des Rois
ガレットはアーモンドペーストを中に詰めたタルト型のものが一般的だが、南仏ではリング型のブリオッシュもある。生地の中に果物の砂糖漬けが入っていて、表面にも飾られている。
○ナヴェットNavette
オレンジの花の水で香りをつけた舟型のビスケット。オリーヴ油が入る。マルセイユのスペシャリテで、正式にはナヴェット・ド・サン・ビクトワール(Navettels de Saint-Victor)という。ナヴェットとは小舟の意。ラテン語navis「船」の派生語。これを作っているのは「Four des Navettes:フー・デ・ナヴェット」(ナヴェットのかまどの意)という店。創業1781年で、毎年2月2日の聖母お潔めの日になると大司教がやって来て、焼き上がったナヴェットを自らオーヴンから取り出すという有名店。この日は海の祭りの日でもあり、人々はサン・ビクトワール修道院に祀られた黒いマリア様を中心に列を作って町を歩き、ナヴェット(海の神様を運んできてくれる船)を食べて祝うのだ。長さ15cmほどの細長い棒状で、真ん中に1本クープが入っている。日持ちは1年。乾パンのような味。工場製のものはスーパーでも売られ、バター入りのリッチなものもある。

Montero,
L'Isle-sur-la-Sorgue
★オレンジの花の水Eau de Fleurs d'Orangers
作りかたは、地中海沿岸で栽培されるビターオレンジの花を、アランビックという蒸留器で水と一緒に蒸留する。すると香りのエッセンスを含んだ水蒸気が、細い管を通る間に冷やされ水滴化する。ポタポタ落ちた液の上澄みがエッセンシャルオイルとして希少かつ高価なネロリ、オイルの下の芳香水がネロリウォーター、オー・ド・フルール・ドランジェとなる。クリスマスの菓子ポンプ・ア・ルイユやガレット、フガス、ムーナ、ナヴェット・・・など南仏や北アフリカのお菓子の香りづけに欠かせない。また、アロマテラピー的にも使え、風呂に数滴入れたり、熱いおしぼりに少し染み込ませて顔にのせると、気分はリラックスする。また皮膚細胞成長促進、毛細血管の破れの修復を助ける作用があるとか。月経前の諸症状にも効能がある女性にやさしい香り。

コンフィズリ
○カリソン・デクサン・プロヴァンス Calisson d'Aix-en-Provence
フルーツ風味のマジパン菓子。エクサン・プロヴァンスの名物。メロンやフルーツの砂糖漬けが入っていることもある。昔は葦を編んで作ったすのこでできあがった菓子を乾燥させたため、ラテン語でcanna「葦」からこのすのこを示すプロヴァンス語calissounまたはcanissounができ、語源となったとも、聖杯あるいは苦い試練という意味の「カリス」という言葉からきたともいわれる。製法は、皮をむいたアーモンド40%と、メロンの砂糖漬けとオレンジなどの果物のシロップを合わせて60%をペースト状に練り合わせ、オレンジの花の水を加えて、角の丸い菱形に抜くのが基本。表面を白いグラス・ロワイヤル(糖衣)でおおう。

もともとはイタリアのお菓子で、13世紀のヴェニスでは、宗教的行事の際に、祝福のしるしとして信者にふるまわれていたらしい。これが17世紀にエクサン・プロヴァンスにもたらされ、当時流行っていたペストから救ってくれると信じられ、ミサのときに配られていた。別の説では、このお菓子は1493年プロヴァンスのルネ王の結婚を祝って作られたもので、結婚式の晩餐会でこれまで微笑まなかった花嫁ジャンヌ王妃が、一口食べるなり美しく微笑んだ。この時参列者達が驚きのあまり「これはカラン(carin、やさしいキスの意)のようだ」と言ったのがカリソンの名の由来であるといわれる。

Andre Genis, Aix en
Provence


Montero, L'Isle-sur-la-Sorgue
○パパリーヌPapalines d'Avignon
アヴィニョンのお土産菓子。表面がピンクやブルーに着色された、丸いトリュフチョコレート。中のチョコレートクリームにオレガノのリキュールが入っている。

La Festival, Avignon
○ヌガー・ド・プロヴァンスNougat de Provance
糖液とハチミツをカラメル状にし、アーモンド、へーゼルナッツ、コリアンダー、アニス、オレンジの花の水を混ぜて作る。これらナッツ類を30%以上入れるのが、Nougat de Provanceで、単にNougat Noirとあるものは15%程度。モンテリマールの白と反対に、空気を含まない黒っぽいヌガー・ノワールが名物。

<コート・ダジュール>

土地の産物を使ったお菓子
○ソッカ Socca
ひよこ豆の粉とオリーヴ油を合わせて巨大な天板に流し、オーヴンで焼き上げたもの。薄いパンケーキ状。サレヤ広場の朝市Marche Saleyaに出ている「シェ・テレサ」は町で1番の人気。十数人分を一度に焼き、注文の度に1人前づつ天板からナイフでひっかくようにしてはがして、紙に包んでくれる。塩、胡椒をかけてもらうのがおいしさアップの秘訣。トゥールーズでは同じものをカードCadeという。

Chez Theresa, Nice
○ピサラディエール Pissaladière
アンチョビと玉葱のピッツァ。ニース周辺の名物。オリーヴ油でじっくりと炒めた玉葱の薄切りをパン生地の上に広げ、アンチョビと黒オリーヴを飾り、オリーヴ油を少しかけて焼く。トマトを玉葱に加えて一緒に炒めることもある。プロヴァンス地方の調味料ピサラpissalat(小魚の塩漬けのピュレ)の派生語。

Chez Theresa, Nice
○ガレット・ブレットGalette Blettes
ブレットというフダン草(ほうれん草によく似た野菜)の緑の部分を甘くピュレ状に煮て、ベーキングパウダー入りのバター生地にはさんで天板いっぱいに焼き、カットしたもの。

Chez Theresa, Nice
○フダン草のトゥルト Tourte de Blettes
ブレットというフダン草(ほうれん草によく似た野菜)のタルト。リンゴ、松の実、レーズン、卵、リキュール、砂糖などが入る。生地はオリーヴ油入り。塩味版(Tourte de Blettes Salé)もある。
○ガレット・ニソワーズGalette Niçoise
ガレット・ブレットと同じ形で、中にリンゴのピュレをはさんだもの。
○シシ・フレジChichi Fregi
ベニエの一種。エジプト豆粉で作るニースの揚げ菓子。ニース方言でfregi「揚げた」、chichi「エジプト豆」という意味。エジプト豆を粉にして水または牛乳と、砂糖を加えてこねたものを揚げる。
○フリュイ・コンフィFruit Confit
ニース中心に作られるフルーツの砂糖漬け。新鮮なフルーツを、温度管理をしながら何度も砂糖液につけて乾燥させて作る。特産のフルーツを使ったコンフィは、素材の味をいかし格段の風味がある。エズ近郊でとれるClementineクレメンティーヌという、オレンジと橙の交配種(小さいミカンのよう)が人気だとか。

Confiserie Florian, Nice