ローヌ・アルプの地方菓子
<リヨネ> <サヴォワ> <ドーフィネ>

<リヨネ>

お祭りのお菓子
○ビューニュ Bugnes
リヨン名物の揚げ菓子。中世フランス語buignet「こぶ」から転じた語。謝肉火曜日Mardi Grasなど宗教的祝日に食べていたが、現代ではリヨンを中心にディジョンからアルルまで、ドーフィネ、フランシュ・コンテ地方も含めた地域で好まれている。中世では揚げ物屋friturierが街頭で売り歩いていた。ビューニュに似た揚げ菓子はフランスの地方によくあり、場所によって、メルヴェイユ、オレイユ、オレイエット、ビニョン、ボトルー、ボトロー、ルーセットなどと呼び名が変わる。小麦粉、卵、バター、砂糖をよく混ぜて薄くのばし、小さく切ってねじったり編んだりして、好みでラム酒やレモンの香りをつけて揚げ、粉糖をふりかける。リヨンのものは16世紀から作られていて、当初はバターも卵も入っておらず、バラの花の香りをつけたとか。さくさくのベーキングパウダー入り、ふんわりのイースト入りなどバリエーションがある。

Leon de Lyon, Lyon

Lyonのマルシェ

土地の産物を使ったお菓子
○ガレット・ペルージェンヌ Galette Pérougienne
リヨンから車で1時間ほどの中世の町ペルージュのスペシャリテ。ブリオッシュ生地にレモンを混ぜてピザのように薄く平らにのばして焼いたもの。このお菓子を最初に売り出したのは、ペルージュにあるオーヴェルジュ(宿泊施設つきレストラン)「オステルリ・デュ・ヴュー・ペルージュ」のオーナー、チボー氏。チボー氏のお母さんが作った「お砂糖のタルト」にヒントを得たのだとか。こちらのレストランでデザートとして頂くと、ラズベリーと壺に入ったクレーム・エペス(生クリームを自然発酵させ、熟成させたどろっとしたクリーム)が添えられる。土地のワイン、セルドンと合わせるのが粋なのだそうだ。

Ostellerie du Vieux Perouges, Perouges
○トロペジェンヌTorpézienne
2枚の円形のブリオッシュに、生クリームとカスタードクリームを混ぜたクリームをはさんだもの。

Le Danay, Annecy
ガレット・ブレッサンヌ Galette Bressane
ブレス風ガレット。薄くのばしたブリオッシュ生地の真ん中に生クリーム(クレーム・ドゥ−ブル)、砂糖を合わせて流し込み、オーヴンで焼いたもの。

Vienneのお菓子屋さん
○ガレット・ペルビエンヌ
ブリオッシュ生地を発酵させないで、薄く円形にのばしてバターをのせ、グラニュー糖をまぶして焼いたもの。
 
○ガレット・マコネGalette Macônnais
マコネ地方に伝わるチュイル(薄い焼き菓子)。独特の鉄の型に生地を流して焼いたワッフルの原型のようなもの。
 
○リンゴのフラミュスFlamusse aux Pommes
ニヴェルネやモルヴァンでよく作られるクラフティ。タルト型に練りパイ生地をしき、リンゴを並べ、牛乳、卵、砂糖、小麦粉で作ったクレープと同じ生地を流し、熱いオーヴンで焼いたもの。

ブルゴーニュ地方
○リゴドンRigodon
少し硬くなったブリオッシュを利用して作るパン・プディング。牛乳に砂糖とシナモンを入れて煮立て、ブリオッシュをちぎって浸しておく。これを卵、片栗粉、クルミ、塩を混ぜた液体に入れ、マール・ド・ブルゴーニュなどのアルコールで香りづけをしてオーヴンで焼いたもの。 
○ガレット・ド・ラ・サオーヌ
赤いプラリネ入りのブリオッシュ。 

コンフィズリ
クッサン・ド・リヨン Coussin de Lyon
「絹産業の都市」リヨンを表す、絹のクッションを形作った緑色のマジパン菓子。中身はチョコレートに生クリーム、バター、牛乳を加えて作った濃厚なガナッシュ。オリンジ・キュラソーで香りをつけられている。

今では色々な色と味のものがある。右はオレンジ、レモン、ブルーベリー味とクッサン。

Voisin, Lyon
○ココンCocon
「絹産業の都市」リヨンを表す、まゆの形のマジパン菓子。

Maurice Dessales, Lyon

<サヴォワ>

土地の産物を使ったお菓子
ビスキュイ・ド・サヴォア Biscuit de Savoie
非常に軽いスポンジケーキ。山型に積み上げられた形で、周り、または上に、規則的な凹凸模様がある。真ん中に穴が開いているものもある。卵黄と卵白を別々に泡立て、小麦粉とコーンスターチを混ぜて焼く。1416年サヴォワ地方のシャンベリーで、アメデ8世がジャン・ド・ベルビルという人に頼んで、自分の城をかたどったお菓子を作らせ、上に王冠をのせてドイツ皇帝に贈ったものだといわれる。そのままケーキにしてもいいし、様々なケーキの台にも用いられる。

現在ではあまり作られないと聞いていたのだが、アヌシーでは多く見ることができた。現地では、ブリオッシュ型やクグロフ型などで焼かれている。またバリエーションとして、私がシャモニーの「A la Gerbe d'Or」というお店で見たのは、Coussin:クッション型とPrquet:枕型という、ビスキュイ・ド・サヴォアをクレープで包んだもの。これは中にはさんでいるコンフィの種類(ラズベリーとブルーベリー)によって包み方を変えてある。周りのクレープがガサガサしていて、中はジャムが染み込んでいて不思議な食感であった。

また、2001年に小泉首相が訪れたパリの「Le Grand Vefour」では、シェフがサヴォワ出身ということで、デザートにサービスされる。

Le Danay, Annecy

M et D Boitte, Annecy
○ガトー・ド・サヴォワGateau de Savoie
中世からあるサヴォワ地方発祥のケーキ。サヴォワ伯アメデ5世の庶子、ピエール・ド・イエーヌPierre de Yenneが1343年頃に考案したといわれる。アメデ6世は神聖ローマ皇帝を招待した宴会で、山や湖も含めたサヴォワ全土を金色の箱庭にして飾り、王冠にのせた巨大なガトー・ド・サヴォワをデザートして供し、大いに喜ばれたという。

 
○リソルRissoles
生地に詰め物をして揚げたり焼いたりした菓子や料理。ラテン語russeolus「赤っぽい」が語源。きつね色に焼いた同名のお菓子が中世に存在しており、その後肉や魚を詰めて揚げるようになった。サヴォワ地方ではリジュールrizule、レズーレresouleと呼ばれ、伝統的な家庭菓子である。練りパイ生地を丸く伸ばして、ジャムや干しフルーツのコンポートをはさんで2つ折りにし、揚げたり焼いたりする。昔はバターとラードを半分づつ折り込んだ折りパイ生地で作っていた。オーヴェルニュ地方、南西地方にもリソルはある。
○マトファンMatefaim
少し分厚いクレープ様のパンケーキ。中央フランスのベリー、ブルゴーニュ、ブレス、リヨネ各地方およびサヴォワ地方で作られる。
○エポーニュÉpognes
サヴォワ地方でかつてパン焼きの日に焼いたパンケーキ。パン生地またはブリオッシュ生地に小さく切ったバターを好みの量加えてこねなおし、トゥルト型に詰め、そば粉を上面にふる。サクランボやプルーンなどのフルーツをのせてオーヴンで焼き、粉糖をふる。
○マリニャンMarignan
干しブドウを加えたサヴァラン生地で作るケーキ。イタリア、ミラノ南東の町メレニャーノで1859年にフランス軍がオーストリア軍に勝利した記念として命名した。
○ブリオッシュ・ド・サン・ジェニ Brioche de Saint-Genix
サヴォワ地方シャベリー近くの街サン・ジェニ・シュル・ギエールのブリオッシュ。生地を円盤形にして中央に穴を開けてドーナツ状にし、ピンク色のプラリネを飾って、はさみで切り込みを入れて作る。プラリネは、カラメル状に煮つめた糖液をアーモンドやヘーゼルナッツにからめたもの。ピンクのプラリネは糖液に色粉を入れる。サヴォワ地方のほかリヨン近郊でもタルトやパンに使われる。

Le Danay, Annecy
○クロワ・ド・サヴォワ
丸くて平たいブリオッシュにカスタードクリームを塗って、上にブリオッシュの帯を格子状にかけて焼いたもの。

Vienneのお菓子屋さん

<ドーフィネ>

土地の産物を使ったお菓子
○リュイファールRuifard
トゥルトの一種。グルノーブル近くのヴァルボネの名物。パン生地をトゥルト型にしき、洋梨、リンゴ、カリンを薄切りにしてバターで炒め、砂糖とシャルトリューズ酒をふってのせる。同じ生地で閉じてオーヴンで焼く。
○ジャガイモのトゥルトTourte de Pommes de Terre
ジャガイモの薄切りと、ゆでたホウレン草、炒めたマッシュルームを交互に重ね、パイ生地に包んで焼いたもの。
○グルノーブルのガトーGâteau Grenoblois
砕いたクルミを混ぜて焼いたビスキュイに、カスタードクリームをはさんだもの。
○ポーニュPogne
甘味が強いブリオッシュ生地を王冠状に焼いたもの。poignée「一握りの」生地で作る、あるいはpoing「げんこつ」で焼く前に生地をへこませるからこの名がついたという説がある。ドーフィネ地方のヴァランス産とローヌ川支流イゼール川流域の町ロマン・シュル・イゼール産が有名。フルーツの砂糖漬けなどが入っていることが多い。カシスのゼリーを添える。
○桃のグラタンGratin de Pêches
トーストしたパンにバターを塗り、桃のシロップ煮と少量のジャムをのせて砂糖をふりかけ、オーヴンで焼き色をつける。
○イチゴのグラタンGratin de Fraises
グラタン皿に薄くスポンジケーキをしいて、イチゴを並べ、その上に卵黄と砂糖、白ワイン、レモン汁で作ったサバイヨンソースをかけ、オーヴンで温める。
○西洋ナシの赤ワイン煮Poires au Vin Rouge
赤ワインに砂糖、オレンジやレモンの薄切り、粒胡椒、シナモン、クローヴなどを加えて煮立てる。皮をむいたナシを入れてしばらく煮た後、煮汁に漬け込んだまま十分冷やして味を含ませる。
○リンゴのシャルロットCharlotte aux Pommes
リンゴを小さく切ってバターと砂糖で炒め、シナモンの風味をつけて冷ましておく。型の底と側面にたっぷりバターを塗って食パンをしきつめ、リンゴを入れて上にもパンをかぶせてオーブンで焼く。アンズのコンフィを添える。

コンフィズリ
○モンテリマールのヌガーNugat de Montélimar
木の実を砂糖やハチミツで固めた菓子。ラテン語nux「クルミ」、俗ラテン語nucatumからプロヴァンス語nogat「クルミのしぼりかす」が派生し、語源となった。また中世にはラングドック地方ではヌーゴnougoまたはマザパンmazapanと呼んでいた。古代ローマのアビキウスのルセットにヌガーの原形が登場するほど昔から存在する菓子だが、現在見られるものは16世紀初めマルセイユで作り始められたもの。農学者セールがヴィヴァレ地方でアーモンドを育てるようになって、現在の製造の中心地モンテリマールでも作るようになった。1701年、モンテリマール市長がルイ14世の孫であるブルゴーニュおよびベリー公に100kgのホワイトヌガーを献上した記録が残っている。第1次世界大戦後は機械で作るようになった。砂糖、水飴、転化糖、ラベンダーのハチミツで飴を作り、泡立てて白濁させる。卵白、牛乳、ゼラチンなどを加えて軽くし、全量の28%のアーモンドと2%のピスタチオを加えて固めてから切ったもの。

○トゥーロンTouron
アーモンド、卵白、砂糖で作って着色したスペイン発祥の菓子。スペインおよび南西フランスでヴァリエーションが多くある。ドーフィネ地方ガップのものは、砂糖、ハチミツを用い、アーモンドとヘーゼルナッツを加える。